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脳内ダダ漏れ帖

趣味とか萌えとか日記とかを無節操に書くブログ

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誰も喜ばなそうな木島と北神の学パロSS。
なんとなく思い付いちゃったので書いてみた。

※腐向け注意!
高校生の木島と北神のバレンタインの話。
バレンタインはうんざりな北神と、折口先生に片想い中の木島。
先生に手作りチョコを用意してきたらしい木島のことが、北神は何となく気にかかっていた。
折口←木島+北神

本文はつづきからどうぞ。

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『ひと月早いホワイトデー』

その日、北神は朝っぱらから薄ら面倒に思いながら通学路を歩いていた。
キンと冷たい寒空の下、わざわざ寮のすぐ外で待っていた妹から、丁寧にラッピングされた包みを渡された時、その事を思い出したのだった。

「今日はバレンタインか……」

「北神てば、やっぱり忘れてたのね」

しょうがないんだから、と呆れつつ滝子は鞄からたたんだ紙袋を取り出して北神に押し付ける。
北神は億劫に思いながらも、おとなしくそれを受け取った。これが無ければ、今日一日は大層不便なこと受け合いだったからだ。

「それじゃ、委員会の仕事があるから先に行くわ。面倒だからって学校サボっちゃダメなんだからね!」

「わかってるよ」

滝子はそれだけ言うと、足早に去って行ってしまった。
一人残された北神 は、ひとつ溜息をついて紙袋を鞄に押し込む。いかにも乱暴な仕舞い方で、端が鞄から飛び出していたが、そんなことは気にしない。重たい足を進めるのに手一杯だ。
今日この日だけは、いつもの学校がひたすら面倒極まりない場所になる事を予感して、北神の足は鉛のように重たくなるのだった。

北神だってなにもバレンタインが嫌いなわけではない。チョコが貰えないなんてこともないし、何ならそこらの男共よりずっと貰えてしまうくらいだ。
だが、それが北神には面倒で仕方がない。モテて悪い気分がするものでもないのだが、だからといってものには限度というものがある。
誰も彼もがここぞとばかりにやって来るのだ。こんな日に、良い機会だからと告白してくるような慎ましい、あるいはミーハーな女に食指は動かない。
というか、そもそも彼女は間に合っていた。別段熱心に付き合って入るわけではないが、下手な相手ではその暫定彼女=異母妹が納得すまい。
その面倒を押しても誰かと付き合いたいなんて気分になったことがなかった。特にそんな出会い方では、情も興味も湧きやしない。
そんなわけで北神にはとにかく面倒で仕方がなかったが、だからといって知らんふりをするわけにもいかず、渡してくるのを断るわけにもいかず、しぶしぶ受け取っていたのだった。

今日ばかりはこの道を歩くのさえ億劫だ。
なぜならこうしてただ歩いていても、

「兵頭先輩!コレ、受け取ってくださいっ!」

見たことさえない下級生までもが、可愛らしくラッピングした箱を寄越してくるのだから。
北神が仕方なく受け取ると、見知らぬ下級生は頬を真っ赤に染めて、離れて見守っていた友人の元へ走り去ってしまった。
北神はその背を見送ると、ひとつ深い溜息を漏らした。深い色のマフラーの間から、悩ましげな白い息が立ち上る。

「モテる男は辛いなあ?北神」

不意に後ろから薄笑いの声が聞こえてきた。

「まったくだ」

北神は投げ遣りに言うと、声のした方を振り返る。
北神と同じ学生服を着た、白仮面の男が歩み寄って来るのが見えた。

「鞄のそれはチョコを入れるための袋かい?男前は大変だ」

「お前程じゃあない」

「中々の皮肉だな」

「案外褒め言葉かもしれないぜ、木島?」

冗談めかして軽く笑い、貰ったチョコを適当に鞄に放り込む。
木島が隣に追いつくと、北神は歩みを再開した。

通学中に木島と同行できるのは北神にとっては幸いだった。彼と一緒に居れば、そうした目的の女子が寄って来ることはまず無い。
木島には少々悪いのだが、やはり普通の女の子には、仮面姿の彼は薄気味悪く映るらしかった。
普段は存在感の薄さからさほど気に掛けられることは無いのだが、こういう場面においては悪目立ちしてしまうようだ。何せ北神に声を掛けようと思ったら、木島という男の存在をどうしても認知せざるを得ないのだから。
木島の奇妙さはその存在に気付いてしまったが最後、普段の影の薄さから一転して異様なまでの近寄り難さを発揮するのである。
慣れればどうという事はないが、初見では近付く事さえ躊躇うに違いない。
現に、今まさに声を掛けるのをひどく躊躇っている様子の女子の姿が視界の端に映っていた。
北神はあえてそれを無視して木島の方を向く。

「まったく、非道い男だ」

木島はそちらを一瞥もせず、真正面を向いたままで言った。仮面のせいでどこを見ているかはわからないが、なんて目敏いものだと思う。

「無駄に受け取るより親切だろう」

「叶わずとも届けたいものってのもあるもんだよ」

……それはお前の話か?と口をついて出そうになるのを我慢する。
それは木島にとっては極めてデリケートな問題で、茶化しちゃならない程のことでもないが、よく程度は考えてやらねばならないことだと知っていた。

なんとなく後に会話が続かない。やはり今日は何かと具合が悪いと思う。
北神は木島が片手に抱える紙袋を見やった。

「それ、中身は?」

「お前がうんざりしてるものだ」

「……チョコか」

「御明察」

意外だな、と北神が漏らすと、木島は貰った訳じゃないと苦笑する。
どうも自分が渡す為にいくつか持って来たものらしい。それも全て手作りだと言うからマメさに頭が下がる。

「ああ、でも根津からは今朝貰ったよ。既製品をね。僕か月かどちらにくれたのかは知らないけど」

「へぇ、あの子もそういうのに興味あったのか」

「友達から教わったようだ」

「そんなのが居たのか」

「アレで案外女友達は多いのさ」

ある意味では自然ななりゆきだがね、と木島は皮肉っぽく笑った。
根津はどこか危なっかしく近寄りがたい少年だったが、こと女にだけは愛想がよかった。
その様が不思議と屈託なく映るのか、何故だか根津は女性と親しくなることが妙に多かったのである。だが、だからといってモテているかと問われると、それはまったく別の問題だ。

「俺の分はあるのか?」

「欲しかったのかい?」

木島は冗談っぽく尋ねる北神の方を見る。
まるで表情は読めないが、口調から苦笑いしているのがわかった。

「そうじゃないが、可能性としてはありうるかとね」

「残念だが君へは用意してないな。用意したのは五人分だけだ。
 瀬条教授と、根津と、土玉と、美蘭と、あとは折口先生に」

「そりゃまた、随分マメなこった。土玉にまで渡すのか」

意外な名前に少し驚く。

「彼にはしつこくせがまれてね。毎年ひとつも貰えないのが寂しいらしい」

「だからって男に貰って嬉しいのか、奴は」

「さあね。だが手作りのものを貰うなら、見ず知らずの相手より、よく知った僕から貰った方がよほど安心だと言ってたよ」

そりゃあそうかもしれないが、と北神は苦笑した。何か趣旨がぶれているとは思わないのだろうか。
ほとんど面識はないのだが、相変わらず変わった男だと思う。

「義理か?」 

「本命な訳はないだろ?所謂友チョコと言うやつだ」

「なら美蘭が本命か」

「違うとわかっててそんな冗談はお言いでないよ」

「悪い悪い」

美蘭に本命チョコを送るだなんて、一ツ橋さんにも折口先生にも悪いじゃないか。木島は軽く肩をすくめた。
そもそも本命でないということは、もはやいちいち付け加えない。

「月から僕宛てのなら本命だが、そいつはうちへ置いてきた」

どうやらそれも手作りしたらしい。
肉片が作れる筈はないから、仕方ないといえば仕方ない。
北神はなんて虚しいチョコだろうと思わないでもなかったが、そんなことをわざわざ言うほど無神経でもなかった。

「瀬条教授は義理?」

「ああ。あえて伏せて差し上げるがね。あの人は何であれ差し上げとかなきゃ後が怖い」

「根津は友チョコか」

「ハズレ。義理の方だ」

「じゃあ、土玉と美蘭が友チョコだ」

「美蘭は……何だろうな。義理とも言えるし、友とも言えるし……」

「いずれにせよ喜ぶさ」

「それはそうだ」

木島は軽く笑っていた。
北神はその様子をちらりと見やる。
続きは聞いてやらない方が親切なのだろうが、独りきりの胸の内にその想いを秘めておかせることもまた憐れに思えた。
ほんの僅かに間をおいた後、何のことはなさそうに尋ねる。

「ならお前、折口先生はどうなんだ?」

「…………折口先生は……そうだな……」

木島は急に押し黙った。どことなく眼差しが遠くなる。
その様子は、木島が折口にただならぬ想いを抱いている事の証明のように思えた。
北神はしょうがなさげに息をつく。

「相変わらず途ならぬ恋しか出来ない男だな。お前は」

「……それはお前にだけは言われたくない」

それは滝子の話だろうか。あるいは別な話だろうか。
聞いてみたい気もしたが、藪蛇になるのは明らかだった。

「茶化して悪かったよ」

「さほど気にしちゃない」

そうは全く見えないが、と思いつつ、北神はおとなしく口をつぐむ。この男がどんなに悩んでいるかはよく知っていた。
最愛の恋人は肉片となり頬へ張り付き、やっと再び恋することの出来た相手は男で既に想い人がある。彼の人が同性愛者である事と、彼の人の想い人に出奔癖があるらしいことだけは幸いだが、望みがないことに変わりはない。
北神は木島がほんの少しだけ不安そうに紙袋を抱くのを見た。
それが不毛な想いであっても、たとえどこか浮気な恋であっても、それでもこの男は一途なのだ。どこまでも一途に愛し続けて、未練たらしく悩み続ける難儀な男なのだ。

「受け取って貰えるといいな」

「何がなんでも受け取って貰うさ。義理だと言ってでも先生に押し付けてみせる」

そういう所ばかり変に押しが強いのがむしろ諦めの裏返しのようにも見え、それがますます憐れに映った。
伸ばし加減のざんばら髪をくしゃりと撫でる。
北神の思いがけない行動に、木島の体がぐらりと傾いだ。

「フラレたら慰めてやるよ」

「そういうのは女の子にするもんだぜ」

木島の仮面の隙間から、寒さに震えぎみの白い吐息が幽かに漏れる。
口調こそ素っ気なかったものの、手を振り払ったりはしなかった。
それだけ心細い思いをしているということだろうか。けして小柄でもないこの男が、何故だかこの時はやけに小さく見えた。
実るとも知れない横恋慕の恋患いは、この飄々とした不敵な男でさえ臆病な少年に変えてしまうらしい。
ほとんど諦め半分なくせに、全く諦め切れていないのがひどく憐れだった。
うつむき加減の木島に対し、北神はあえて不敵に笑って見せる。

「問題ない。今日のお前は十分乙女だ」

ふざけた調子でますますぐしゃぐしゃと押し付けるように頭を撫で回すと、やっと木島はその手を押し退けた。

「まったくもって嬉しかないな」

どことなく不安げな様子は拭えないが、苦笑気味の木島の声に北神は少しだけ安堵する。
木島を撫で回していた手を、コートのポケットに押し込んだ。

「そりゃよかった。嬉しく思うようなら流石に心配するところだ」

「お前に心配されるようなったら僕もおしまいだよ」

「ひどい言い草だな。お前には敬意を払って接してきたつもりなんだが、伝わらなかったか?」

北神はくくっと笑う。
白い仮面の内側から、くすりと微かな吐息の漏れる音がした。

「あれが敬意なら、土玉だって紳士だ」

あんまりな台詞に、北神は思わず吹き出す。
「土玉」と「紳士」という、あまりにも不釣り合いな単語の組み合わせに失笑した。

「そりゃ悪かった。次からは気を付けよう」

「それはそれで土玉に悪い反応だがね」

微塵もそうは思っていなさそうな態度で木島はニヤリとする。
もちろん顔は見えない訳だが、気配が何となく漏れていた。

放課後。
チョコレートとラブレター満載の紙袋を抱え、北神はいかにもうんざりといった様子で帰路についた。
男友達からは羨ましがられたり、面倒くさがるなんて贅沢だと怒られたりしたものだが、本当に面倒極まりないのだから仕方ない。
もうこれ以上は増えてくれるなと思いつつ紙袋を抱え直す。

気疲れてのろのろと歩む北神が、ふと前の方を見やると見慣れた後ろ姿があるのに気付いた。
木島だ。なんだか足取り軽やかで、少し弾んで見える。
いつもは気配を消し気味にしている事の多い木島が、珍しく跳ねるように歩いていた。
何か嬉しい事でもあったのだろうか。
北神は気になって、歩みを速めて追い付いた。

「えらく御機嫌だな、木島」

後ろから声を掛けると、木島はくるりと後ろを振り返った。

「ああ、北神か。僕だってたまには浮かれることのひとつやふたつあるさ」

随分な上機嫌である。なにやら仮面まで笑って見える。

「その様子だと、折口先生に受け取ってもらえたみたいだな」

今日、木島がこれ程までに機嫌を良くする事なんて、きっとそれしかないだろう。
それにしても浮かれ過ぎだが、と北神は内心苦笑した。
木島はいかにも嬉しそうに肯定すると、弾む声を押さえきれない様子で続けた。

「それが聞いてくれ北神。それだけじゃないんだぜ」

「お前が聞いてくれとは珍しいな。先生に告白されでもしたのか?」

「流石にそれはないがね。ほらコレだ、見てくれ。折口先生が僕にと下さったんだ」

木島はそう言って、鞄の中から大事そうに何やら銘柄の入った箱を取り出して見せた。
箱を開くと、中には半透明の包みに入った、長方形の菓子が並べられている。キャラメルのようなものの中にナッツの沢山入った、なにやらあまり見慣れない食べ物だ。

「これは……キャラメルか何かか?」

「ヌガーだよ。昨日、美蘭と出掛けた時に買わされたらしくてね。僕の分もついでに買って下さったんだそうだ」

「なんだ、ついでか」

何となく面白くなくて、つまらなそうに言ってみるが、木島に気にするような様子はない。

「ついでだからってなんだ。先生が今日僕のために用意して下さった事には違いないさ」

ウキウキとして箱の中身を見つめると、大事そうに蓋をして鞄に仕舞い込む。ほぼ社交辞令に近い、たったそれだけの出来事に浮かれる木島に、呆れのような憐れなようなよく分からない心持ちになった。

「ちょっと見ない間に、おめでたい男になったもんだな」

「おめでたくって結構。僕はこれでも満足なんだ」

まあ、それで十分だとこうもはっきりと言えるのなら、それが強がりだとしても何よりなことだが。
北神は一瞬そう考えて、即座にその考えを否定した。これはどうやら本気の浮かれ具合だ。
木島は白い仮面の隙間から、ほう、と溜息のような吐息を漏らし、優しく鞄を抱き締める。

「折口先生は『ひと月早いホワイトデーだと思ってくれ』と言って下さった。たとえその言葉に何の含みもなくとも、僕はそれをとても嬉しく思う」

「ひと月早いホワイトデーねぇ」

北神は繰り返して呟くと、ふと考えた。
その台詞はつまり、折口先生は木島がチョコを寄越して来ることを予測していた訳で、だとするなら、木島は先生にそれほどまでにマメな男と認識されているか、あるいは既に木島の想いが伝わってしまっているということか?
もし万が一後者が正解であるならば、この贈り物は木島の想いに対する返答に他ならず、ヌガーがキャラメル、つまりはキャンディーの類いだということを考えると、「ホワイトデーのお返しに、キャンディーを贈った」先生の答えは……

「なあ、北神」

「なんだ」

「これ、ホワイトデーにお返しした方が良いと思うか?」

北神の思考を遮り木島は問い掛ける。君ならどうする?と、間の抜けた相談を持ち掛ける木島に、北神は独り苦笑した。
これはどうも「そういう可能性」すら考えてもいなさそうだ。それは諦めの賜物なのか、それとも単に鈍感なのか。

「さあ。好きにすれば良いんじゃないか?二重にはなるが、だからって嫌な顔もしないだろう」

「それもそうだ。じゃあ、美蘭へのお返しと一緒に渡すとしよう。それならきっと断られないに違いないからね」

「そこまで気を回さずとも、先生はお断りにはならんだろうよ」

話す間も木島はどこか上の空で、北神はしょうがなさげに軽く笑った。
なんだか微笑ましいような、少しもどかしいような、それでいて何か複雑なような。
なんとなく面白くない気分がしなくもないのは、友としての嫉妬だろうか。それとも、彼等の不貞に思うところでもあるのだろうか。自分はそんなに女々しくもなければ、生真面目でもなかった筈だけれど。

「おい、木島。このチョコ処理するの手伝ってけよ」

折口先生の事で頭が一杯の木島に、ほんの少しだけ水を注す。
チョコの詰まった紙袋を揺らすと、木島はそれを見やった。
いつもなら、「どうせ僕に食わせる気だろ」と、飄々として断る所であるが、この日は少しだけ違っていた。

「なら、僕のうちに来いよ。どうせ碌に食べる気がないんだろ?
 ケーキか何かに作り直してやるから、寮の皆と分けて食べると良い」

やはり、随分機嫌がいい。

「そりゃ助かる。毎年うんざりして捨ててたところだ」

「非道いな」

「じゃあ今度からお前にやるから食べてくれよ」

「それじゃ捨ててるのと一緒じゃないか」

「皆と分けて食べるのだってそうだろ」

「そりゃあそうだが」

木島はそう話しつつも、北神のチョコで何を作るか思案しているようだった。ようやく木島の頭の中の折口先生は奥に引っ込んでくれたらしい。
今は機嫌が良いだけの、ただの木島だ。上機嫌の理由を思い出すと、釈然としない気持ちになるけれど。
ちょっと頭でも小突いてやろうか。冗談半分に考えていたが、機嫌良く思案する横顔にふと思い立つ。そういえば、鞄にまだ入っている筈だ。
北神は鞄をあさると、先日買ったまま鞄に入りっぱなしだったものを取り出した。
手にしたそれで、 コツン、と軽く仮面の額の隅を叩く。

「痛て」

「嘘つけ」

北神はニヤッと笑って、木島の目の前にそれを差し出した。
棒状の細長い包装の内に、整然と並ぶ一口大のチョコクッキー。コンビニなどでよく売られている代物だ。

「これ、やるよ」

木島は差し出されたそれを、不思議そうに受け取る。仮面の内側で目をぱちくりとさせていた。

「くれるなら貰うけど、急になんだい」

「御礼。先に渡しとけと思って」

「ふうん。殊勝だな、珍しい」

渡されたものをじっと見つめて、黙って鞄へし舞い込む。
北神は不思議そうにしながらも、受け取ったものをしまう木島を見ている。
そして、いかにもふっと思い付いたように、何気ないふうを装って言葉を付け加えた。

「それに、俺が貰ったチョコの作り直しとはいえ、結果的にお前からもチョコ製品を受け取るわけだからな。ひと月早いホワイトデーさ」

北神が悪戯っぽくニヤリとしてみせると、木島はしょうがなさそうに苦笑する。
これで、折口先生でいっぱいだったバレンタインの思い出に、少しは割り込めただろうか?
ほんの少しだけ胸がすいた。
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プロフィール

HN:
ヤサブロー
性別:
女性
自己紹介:
無双・BSR至上主義のガチ腐。
無双は三國寄りで好き。
けして、歴女ではない。

一応、同人小説サイト持ち。
ほぼ倉庫化してるけど気にしない。
pixivでは別HNで活動中。

全般的に癖のあるキャラを好きになりがち。

↓↓好き↓↓
司馬懿/陳宮殿/郭淮さん/鍾会さん(無双)
明智/大谷さん/官兵衛さん/又兵衛(BASARA)
松下/埋れ木/二世(悪魔くん)
カイジ/一条/和也/涯/零/森田(福本)
鎬昂昇(バキ)
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