2017/01/26 (Thu) 【三國無双：司馬家】父の期待

全く続きが思いつかなくて消そうかなと思っていた短文。
詰まったところまでで話が完結している気もするし、雰囲気は割と気に入っているので消すのも勿体無いかと思いこちらの方へＵＰすることに。

父と師が昭を眺めつつ会話するだけのとても短い話です。
※王元姫と司馬兄弟の関係性について、若干の創作設定が混じるので苦手な方は要注意。
総文字数：約1200字

本文はつづきから。

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『父の期待』

司馬昭と王元姫が中庭で楽しげに会話、というか王元姫が説教するのを司馬昭がはぐらかしていた時、その様子を司馬懿と司馬師が城から見ていた。
司馬師は常通りの感情に乏しい顔で、司馬懿は少しばかり嬉しそうに、息子とその許嫁の戯れる様を見下ろしている。いったい何を考えているのかわからない表情で、ちらと隣の司馬懿に視線をやると、眉一つ動かさずにまた司馬昭と王元姫に視線を戻した。
司馬懿の中庭の二人を見る眼差しは、見たことがないくらい優しげな色を宿している。
微笑ましげに見下ろす瞳は、可愛い我が子を見守る父の瞳だった。

「昭と元姫の仲が良好のようでなによりだ。初めはどうなることかと心配だったが…」

「依存癖は治りませんが、怠け癖はマシになったかと」

元姫の説教のお陰だと、司馬師は二人を見下ろしたまま淡々と言う。
依存癖は治らないと言う司馬師の言葉に、司馬懿は苦笑したが、司馬昭らしいことだと思った。
やはり、あの娘を選んで良かったと、司馬懿は己の目の確かさに、我が事ながら鼻を高くする。
王元姫は才女の誉れ高く、美貌の姫君と名高い少女だった為に、司馬懿の目に留まったのであった。司馬懿は、彼女を二人の息子のどちらかの妻にと請うたのであった。
もっとも、それは彼女の親と交わしたものであり、彼女にはただその才を請い、彼女と歳近い息子達の手助けを頼んだだけである。
だが、聡い彼女の事だ、きっともう司馬懿の真意には気付いているだろう。気付かぬのは司馬昭一人であるらしい。
だが、きっとそれを知ったところで、少しも驚きはしないだろうが。

「初めは師よ、お前の妻にとも思ったが……昭の妻に迎えるが相応しいな。あの怠け者とまともに付き合える女など、恐らく元姫をおいて他には居まい」

苦笑しながら言う司馬懿に、司馬師もフッと笑った。

「大概が途中で諦めるか、昭が逃げ出すかでしょうから」

「違いない」

笑いながら言う司馬懿達の視線の先で、怒ったようにそっぽを向く王元姫をなんとかなだめようと、司馬昭が焦った様子で試行錯誤している。
司馬懿は楽しそうにそれを眺めたあと、司馬師にちらっと視線をやってからかうように言った。

「まあ、三國一の美男美女の子を孫にできんのは惜しいがな！」

確実に美童であっただろうなと言ってクククと笑う。
司馬師は微かに皮肉っぽく笑った。

「父上も孫を強請る歳になりましたか」

「私を年寄り扱いするな。だいたい、私が折角お前の相貌を誉めてやっているのだぞ？素直に喜ばぬか」

可愛げの無い、と司馬懿はふざけて怒ったようなフリをして言う。
司馬師は皮肉な笑顔を崩さずに、むしろ、さらにニヤリとした。口元の歪め方が、司馬懿のそれにそっくりだ。

「流石、父上。ご自分を持ち上げるのがお上手だ。お褒め頂き光栄ですが、私がこの父上似の相貌を自慢の一つにしているのはご存知ですか？」

「父上似、か……フハハハ！師よ、お前も世辞が上手くなったな！」

司馬懿は至極機嫌良さげに笑った。